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機材の寿命について



今回は機材の寿命について書こうと思います。
主に電解コンデンサの話になります。「電解コンデンサの寿命について」という題名だと見ていただけないかと思いまして機材の寿命としました(笑)

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さて、機材の寿命の1つとなるのが電解コンデンサの寿命です。
電解コンデンサというのは内部の回路を構成する電子部品の一つです。直流を切り交流のみを通したりします。電源部ではフィルタとして機能しAC100Vから内部回路用のDCを作り出すために使用したりします。

シリーズ電源にしろスイッチング電源にしろACがダイオードを通った直後の波形にはリップルと呼ばれるAC成分が残っています。これをアナログに使うには聴感上問題ないレベルまでリップルをなくす必要があります。電源ICなどで60〜80dBこのリップルを落とすことができますがその予備段階、IC後にもフィルタとしてコンデンサを使用し合計で直流に近づけます。

このコンデンサが機能しなくなると電源ICを含める周辺部品が壊れたり、誤作動が起きたり、リップルが残ったままハムノイズとして現れて動作します。

電解コンデンサは構造上電解液というものが入っています。この電解液は周辺温度、時間経過により蒸発していきコンデンサとして機能しなくなります。これがコンデンサの寿命でドライアップと言われます。

電解コンデンサは異常時には上部にある弁が開くので故障とわかる場合がありますが寿命を迎える寸前の場合は目視では分からないこともあります。取り外してみて測定しても不明な場合もあります。小さなものだと弁がない物もありますし、下から出るケースもあります。当方が修理したMOTU896の電源部に使用されていた電解コンデンサは下から噴出し基板が焦げており上からは判断できませんでした。
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また同じくデジタル回路用の電解コンデンサも寿命を迎えており誤動作がかなり起きていました。これは面実装タイプというもので目視では到底判断ができません。

コンデンサの寿命は宿命のようなもので安物、信頼性の高い物にかかわらずあります(もちろん寿命の違いはあります)。
日本メーカーの一般的なものでKMGというシリーズのコンデンサがあります。このKMGのデータシートには1,000〜2,000時間105℃と書かれています。これは「105℃の環境で1,000〜2,000時間で寿命が来る」という意味です。この105℃というのは部屋の室温ではありません。コンデンサ周辺の温度ですので発熱が多い電源付近ですと室温よりかなり上がります。パソコンのCPUとかを想像していただければ分かりやすいかと思います。

そしてこの温度は10℃上下するごとに寿命が2倍(1/2)になるという法則があります(アレニウスの法則と言うそうです)。いくら発熱したとしても105℃で使うことはないと思われるかもしれません。仮に65℃で使用する場合、2,000時間 x2の4乗で32,000時間となります。24時間機材の電源をつけていた場合3年半ほどで寿命がきます。これは「105℃2,000時間のコンデンサ」の場合です。

中には85℃品、2,000時間という物もあります。これを65℃環境で24時間使い続けると8000時間、1年もちません。。。

シリーズ電源の場合は50〜120Hz程度ですが、スイッチング電源の2次側はその名の通り可聴帯域外(100kHz前後)でスイッチングさせたものをフィルタさせますので電解コンデンサに寿命が来ると早めにダメになる場合が多いです。

コンデンサの寿命は上記のように
1、温度を下げる(冷房を付ける、涼しいところに置く、ファンを付ける等)
2、使用時間(電源投入時間)を少なくする
3、耐久性の高いコンデンサを使用する
などで大きく変わります。熱を出さない機材だと問題ないかもしれませんし中には105℃/10,000時間、150℃/2,000時間なんていう物もあります。逆にもっと短い物もあります、、、

効率でいうとシリーズ電源よりスイッチング電源のほうがいいため発熱しづらいですが、スイッチング電源を使う理由として消費電力が大きいものに使うということがあるので一概にどちらが発熱が大きい等は言えません。

ただコンデンサの寿命から考えると寝ているときくらいは切っておいたほうがいいかもしれませんね。1日5時間としても1年で2,000時間貯金できます。

残念なことに電解コンデンサは未使用でも寿命が来ます。ビンテージにはマイク、機材、いろいろありますがビンテージの電解コンデンサだけは今すぐ捨てたほうがいいかもしれません。直ちに影響がなくともいつ寿命が来るのか分かりません。

この記事はわかりやすいようにざっくりと温度、寿命、などについてのみ触れています。他にもいろいろ要因はありますが是非参考になればと思います。

バランス伝送とアンバラ伝送



4000Eと4000GのEQの違いについてかなり棚上げしています笑
資料を作る必要があるのでタイミングを見て検討中です。需要なども考慮されますので希望の方は是非アクションをお願いします笑

さて今回はバランス伝送とアンバラ伝送についてです。この内容は主にオーディオ機器のオーディオ入出力についての話になります。ちなみに商用電源、コンセントの100Vはアンバラ伝送でコンセントの2つの穴の片方はグランドになっています。なので極性を揃えたほうがいいという話をよく聞きますよね。

さてこのアンバラとバランスについてですがアンバラがわかりやすいと思いますのでまずはこちらから。アンバラはアンバランスのことですが信号は2つの端子で伝送されます。
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わかりやすいのはRCAプラグやフォーンのTSでしょうか。片方がグランド、片方がホットになります。グランドに対してホットの電位で伝送されます。人間でいうと地面に対して身長が何センチかという情報が伝送されます。

バランス伝送は一見難しいですが割と簡単です。アンバラのグランド、ホットに加えてコールドが追加されます。コールドはホットを逆相にしただけです。逆相などの単語の説明は省きます。伝送においてノイズが乗る場合があります。アンバラ伝送では伝送中にノイズが乗ってしまうとそのまま伝わりますが、バランス伝送では逆相のコールド成分にも同じノイズが乗ります(コモンモードノイズと言います)。バランス伝送では入力もバランス入力です。バランス入力はホットはそのまま、コールドは逆相にしてホットと同じ同相にしてホットとミックスされます。

するとノイズ成分は逆相で打ち消され、信号は2倍になります。つまりバランス伝送は伝送時のノイズに強いというメリットがあります。

今回はバランス、アンバラの説明ではありません。
結論から言うとアンバラ出力はアンバラ入力へ、バランス出力はバランス入力へ繋いでくださいということをお伝えしたいのです。

たまに「アンバラのほうが音がいいのでアンバラ出力にしています」というメーカーさんがありますがプロオーディオ機器ではバランス伝送が一般的です。アンバラとバランスを混ぜるとよくありません。上記のように統一を是非お願いします。音がいい以前に混ぜてしまうと誤動作、意図しない音質の変化があります。もちろんケーブルもバランス伝送の場合はバランスケーブルを使わないと意味がありません。

そしてバランス伝送には電子バランスとトランスバランスがあります。トランスバランスはNeve氏もおっしゃっていますがグランドと浮いているものが大半です。それをケーブルのみでアンバラに変換してしまうと見た目は帳尻が合っていても特性や負荷が変わることがあります。あまりお勧めしません。

Shinya's Studioではアンバラのほうが音がいい、悪い以前に正しく接続することが前提だという考えです。音がいい悪いでいうとEQやコンプなどを挟まないほうがいいですよね(笑)しかもアンバラのほうが音がいいという理屈は変換回路を通らないということだと思いますが入出力にはバッファーが必要です。それがないと回路が安定しません。そのバッファーがアンバラかバランスかの違いなのでプロオーディオに関して言えばバランス伝送がやはり重要だと思います。さらに何十mも引き廻すPAの現場では上記のノイズに強いという意味でもバランス伝送は必須です。

Shinya's Studio製の機材でもトランス入出力は多々あります。1U76,1U78,EQP,Neve EQ,TransBoxです。これらの機材は特にバランスで伝送してください。誤動作はもちろん特性が想定しないようなことになる場合があります。4000EQなどは電子バランスですがShinya's Studioは基本的にバランス伝送ですのでバランスで接続してください。

ちなみにHi-Z端子などはシンセやギターアウトを想定されていますのでアンバラのことが多いです。

不安な方は是非お問い合わせください。


納期の内訳



Shinya's Studioでは基本的に機材は全て受注生産となっています。
納期は都度変わりますので不安な方は事前にお問い合わせください。ちなみにShinya's Studioにおいての納期とはお振り込み確認後から納品までの期間を指します。

そして納期の内訳をこちらでご紹介します。
納期は1〜2ヶ月となることが多いですがShinya's Studio的にはほぼ「待ち」となります。

詳細な納期については下記の通り
1、在庫不足や特注により「板金」が必要な場合は設計、発注、納品で1ヶ月前後
2、在庫不足や特注により「基板」が必要な場合は設計、発注、納品で1ヶ月前後
3、在庫不足や特注により「部品」が必要な場合は設計、発注、納品で1週間〜1ヶ月前後
となります。当方のみの問題ではなくむしろ当方以外の問題が多いですので当方での前倒しができません(当方以外の事情により前後することは多々あります)。

板金は主に機材のボディーの「プレス板金」とフロントパネルの「NC加工」に分かれます。
プレス板金は都度送料が発生しませんが納期1ヶ月かかることがあります。
NC加工は納期は数日ですが設計、打ち合わせに1週間程度かかります。また送料は都度発生するため月にある程度まとめて発注します。そのため数週間ずれることもあります。

基板は新規については設計に時間が必要です。発注〜納品は2週間くらいでしょうか。年末などを挟むとずれ込みます。こちらも月にまとめてです。

部品については仕入先が様々なので一概には言えませんが数日で届くこともあります。ただこちらも都度送料がかかることがありますのでまとめて発注します。それぞれ予算の都合で送料を調整し遅い国際便となる場合もあります。仕入先に在庫がない場合はさらに「待ち」が発生します。

以上意外かもしれませんが当方的には毎日製作しているわけではないですがほぼ毎日国内外から荷物が届きます。製作日数自体は機材にもよりますが設計を除けば1週間程度だと思います。お急ぎの方はお早めにご購入、ご相談ください〜。

VPR用VU Meterを作りたい!



Shinya's Studioの野望の1つとしてAPI Lunchboxでコンソールを作りたいということがあります。
前から言っていることですが需要としては今ひとつのようです。

ただこのプロジェクトを着実に進めるべくVUメーターを作ろうと思います!
http://store.shinya-s-studio.com/ca0/71/p-r-s/
HA,EQ,Comp,Faderはすでに製作実績がありますのでVUメーターさえできればコンソールはとりあえず完成します。

そこでアンケートを取りたいと思います。
VUメーターの見た目についてです。VUメーターは今の所Sifamにしたいとおもっています。コンプのGRメーター用には他のメーカーでもいいかなと思っていますがVUメーターとして販売するからにはSifamにした方がいいのかなと思っています。ただサイズなどの問題もあり他メーカーになるかもしれません。測定器並みの精度で作るわけではないので他メーカーでもいいかなとも思っています。

さてアンケートですがいわゆるスタンダードタイプとレトロタイプどちらがいいでしょうか。
スタンダードタイプはAL29というものです。
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そしてレトロタイプはAL20というものです。
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僕自身としてはレトロと言うと聞こえはいいですがコンソールや普通のVUメーターとして考えるとクセが強いかなと思います。AL29は今のSSL,Neveに採用されています。昔はR22というタイプがSSLの4000シリーズなどに入っていましたが今は新品では手に入らずかつ手に入っても高級ラインなので定価が1つ15,000円くらいだったかと思います。

現状AL29で進めようかと思っていますがデメリットとして、かなり大きくランチボックスにギリギリ入るかなと言ったところです。そのため調整トリムは前面に出せないので側面に設置予定です。AL20はその点、一回り小さくトリムも前面に出せそうです。スタンダードタイプも一回り小さいAL19というものがありますが、これはAL20よりさらに一回り小さく(1U76で使っているものと同じです)VUメーターとしては視認性に欠けるかなと思います。

第3の選択肢としては他メーカーにすることでスタンダードタイプでもちょうどいいサイズのものがあり調整トリムも前面に出せそうです。

というわけでどちらもいいところがありますが皆さんはどれがいいでしょうか。

特注品を作りませんか?



4000Eと4000GのEQについてはまた後日やるとして、、、
今回は特注品についてご紹介します。

過去に製作した特注品をご紹介します。

ーー1U76のHPF仕様ーー
これは1U76のサイドチェーンにHPFをつけるというもの。現在はオプションとしてライナップされています。その他トランス選択、アタックタイム変更なども可能です。Shinya's Studioの1U76はRev.Dですが他のRevも検討中です。

ーーEQPのステレオーー
EQP1のステレオ仕様です。ボリューム式で特注させていただきましたがノッチ式も可能です。接点が増えるごとに高くなりますがマスタリングや2Mixなどでも使い易いかとおもいます。またNeve系やSSL系などでも可能です。

ーー4000系の特注ーー
現在製作中ですが4000 DYNと4000chストリップを受注いただきました。
DYNはその名の通りchモジュールのDYNセクション、コンプとゲート(エキスパンダー)の2chを1Uに組み込みます。カードはオリジナルのものをリキャップして使用します。
4000chストリップもオリジナルのカードを使用します。今回はまだ決定していませんがGのマイクプリ、コンプ、EのEQなど組み合わせが可能です。

ーートークバックコンプーー
こちらは当方発案なのですがSSLのトークバックコンプを元にそのままトークバック用のシステムを組む予定です。HAは5〜8ch程度とミックス回路の後にトークバックコンプ。プラス機能としてダックを搭載します。ダックはゲートの逆、コンプの強い版という感じである程度の音量が入ると遮断します。話していて急にドラムを叩かれるとOFFになるとかそういった使い方です。その他DAWにオーディオを貼っておいて走らせるとオーディオ信号を検知してOFFとかにも効果的です。

特注のメリットとしてはやはり作りたいものを作れるということです。4000のchストリップでGとEを混ぜるなどはどこにも無いものです。他の機材もちろんありません。あとはご希望の型番を印字できます。「〇〇Special」などやお名前などもいいとおもいます。少し高くなりますがUVプリントやお好みの塗装、メッキなどもできます。

デメリットとしては一点ものとなるため若干高くなります。製作で一番高価なのがケースなのですが特注となるため商品は基本的に4万円〜+部品代、工賃となります。あと基板やケースの特注となりますと納期も2、3ヶ月〜と若干遅れます。お急ぎの方はその分お早めにご相談ください。

お見積もりは暫定となりますが可、不可含めて無料でお見積もりさせていただきます。ぜひご相談ください。

4000EQのEとGの違いについて[その3]



ようやく今回で4000Eと4000GのEQについて触れられそうです。

でもその前に笑
4000Eと4000Gと一言で言っても年代によって色々あるようで。それはEQのみならずHAなどでも言えるようです。4000シリーズはカードが82Eで始まる型番で管理されています。今回はそのなかでもEQのカードである82E242(Eシリーズ)、82E292(Gシリーズ)に絞っていこうと思います。他にも種類があるようですが海外ではその時に使用されていたEQのLFのツマミの色でBlackEQ,BrawnEQなどと呼ばれているようです。そしてGに242がついている(つけられる)こともあるようです?既に英語サイトですがまとめられている記事がありましたのでご紹介します。
http://www.recycledaudio.co.uk/consoles/ssl-faq-info/eq-types/tech-info/

さてまず242と292の違いですが一番わかりやすいのはBELLスイッチとx3,/3スイッチではないでしょうか。Eシリーズの242にはLF,HF用にBELLスイッチが、Gシリーズの292にはLMF,HMF用にx3,/3スイッチが付いています。これは誰が見ても分かりますし、誰でも知っています。BELLスイッチというとなんだかありがたい感じがしますがLF,HFをシェルビングからピーキングにするスイッチです。周波数特性を実機で測定してみました(プラグインではありません)。

82E242LF2.png 82E242LF3.png 82E242LF.png
まず1枚目は242のLF BELLカーブでの最低周波数です。40Hz近辺まできています。ゲインは最大で18dB程度です。ローなので暴れていますが実際は綺麗なカーブだと思います。2枚目は最高周波数です。500Hzくらいまできています。Qは固定でかなり狭いです。3枚目はシェルビングで最大16dB、こんなカーブです。Qは内部で可変できるのですが最大ゲインも変わります。パネル的には固定です。

つづいて242のHFセクション
82E242HF.png 82E242HF2.png82E242HF-Q.png
1枚目は最高周波数、ゲインは18dB16kHzくらいでしょうか。2枚目は最低ではありませんがカーブがわかりやすいよう2kHz付近の画像です。3枚目はシェルビングの最低周波数。前回で書いたように高周波では若干戻りつつあります。50kHzとかではもっと顕著ではないでしょうか。EQの周波数をあげるとこのまま移動します。一部凹んでいるのは誤差のレベルかと思います。

さらに242のHMF
82E242HMF.png 82E242HMF-Q.png
HMFにはQがありますのでその比較になります。1枚目はHMFの最低周波数でQを一番絞った状態。2枚目は同じくQを一番開いた状態。

そして292のLMF
82E292LF.png 82E292LF2.png
Gシリーズのカード292のLMFセクションです。1枚目は÷3スイッチでの最低周波数です。242より若干高めです。Qも一番絞っていますが割と広めです。2枚目は同セクションの÷3無しでの最高周波数。

そして292のHMF
82E292HMF2.png 82E292HMF.png 82E292HMF-Q.png
1枚目が最低周波数、2枚目はx3での最高周波数です。Qは一番絞っても広いです。3枚目はQを一番開いた状態。

最後にHPF,LPFの比較です。
82E242PF.png 82E292PF.png
一枚目が242のHPF,LPFをかけた状態。わかりやすいようにカーブが全て画面に入るようにしています。2枚目が292の同じ状態。回路は若干違いますがHPF,LPFに関してはほぼ同じです。やはりHPFの方がLPFよりするどいです。

というわけで今回はこの辺にしておきます。次回はwavesのプラグインで実機とどれくらい違うのか検証したいと思います。